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末永 大輝*; 鈴木 渓; 安井 繁宏*
Physical Review Research (Internet), 2(2), p.023066_1 - 023066_11, 2020/04
QCD近藤効果は、高密度クォーク物質中においてチャームクォーク・ボトムクォークなどのヘビークォークが不純物として存在するときに生じる量子現象である。本論文では、QCD近藤効果の実現した基底状態から励起されるエキシトンモードが束縛状態として存在することを予言し、その詳細な性質を調べた。具体的には、平均場近似に基づいてQCD近藤効果を記述する有効模型を構築し、励起モードとして実現可能な量子数(スピンやパリティ)やそれらの分散関係を調べた。これらのエキシトンは電気的・カラー的に中性になることができるため、(電荷やカラー荷を持つ粒子とは異なり)輸送現象における「中性カレント」として出現し、電気伝導や熱伝導に対するヴィーデマン・フランツ則の破れに寄与することが期待される。このような近藤エキシトンは、ディラック粒子やワイル粒子のような「相対論的」フェルミオンに対する近藤効果における普遍的な物理現象であり、クォーク物質に限らずディラック・ワイル電子系への応用も期待される。
高田 弘; 石橋 健二*; 義澤 宣明*; 中原 康明
Journal of Nuclear Science and Technology, 31(1), p.80 - 82, 1994/01
被引用回数:1 パーセンタイル:26.96(Nuclear Science & Technology)核破砕反応計算コードの計算精度を検証する目的で、入射エネルギー25~1600MeVの場合のZrとPbターゲットにおける(p,xp),(p,xn)反応の二重微分断面積についてベンチマーク計算を行った。計算では、核内カスケード・蒸発モデルに基づくNUCLEUSとエキシトンモデルにより前平衡過程を解析できる機能を加えたHETC-3STEPを用いた。前平衡過程の解析では、核反応に伴うエキシトン数の遷移確率を2.5倍粒子放出方向をほぼ等方にする等の修正が加えられている。計算の結果、NUCLEUSは入射エネルギーが256MeV以上では実験結果を比較的良く再現するが、入射エネルギーが160MeV以下では後方への粒子放出を過小評価することがわかった。一方、HETC-3STEPは、この後方における過小評価を改善し、全入射エネルギーに互り、実験結果を良く再現した。ただし、前方の準弾正散乱とそれに続く連続成分については、両コードとも実験を再現できなかった。
岩本 昭
Physical Review C, 35(3), p.984 - 993, 1987/03
被引用回数:13 パーセンタイル:60.99(Physics, Nuclear)重イオン反応で多数観測される高エネルギーの軽粒子は謂ゆる蒸発模型では説明がつかず、現象論的な動くソースによる解析が良い結果を与えている。この模型はソースの速度と温度という2つの任意パラメータを含み、その物理的な理解は進んでいない。我々はエキシトン模型の立場からこの問題に取組んだ。初期条件としてクーロン障壁での核子のフェルミ運動と重イオンの相対運動を結合して、又エキシトン模型にエキシトンの運動量を新しい変数として取入れるように拡張して角分布を出すよう定式化した。数値計算を核子当り10~20MeVの入射エネルギーの6種類の反応に対して行ない、放出陽子の2重微分断面積を計算したところ、実験値を良く再現できた。これは動くソース模型を基礎ずける1つの模型になっていると思われる。
岩本 昭; 原田 吉之助
Nuclear Physics A, 419, p.472 - 496, 1984/00
前平衡状態からの軽粒子放出に関する模型とそれに基づく数値計算を示す。第1の模型は、一般化したエキシトン模型を拡張して基本的な核子、核子散乱の運動学を正しく取り入れるようにしたものである。この一般化にもかかわらず、最終的な断面積の式が簡単に求まることが示され、(p,p')反応に対して数値計算を行った結果、従来の計算を改良することが示された。第2の模型は複合軽粒子放出の角分布を計算する模型である。我々が既に発表したエネルギースペクトルの計算法と、この論文の第1の模型を結合して断面積の定式化を行った。これを種々の(p,)反応について数値計算した結果、2重微分断面積の実験データを非常によく再現することが示された。
大塚 孝治; 原田 吉之助
Phys.Lett.,B, B121, p.106 - 110, 1983/00
重イオン核反応に於ける高速粒子放出を前平衡過程として記述する。軽い重イオンの入射粒子と、重いターゲットの間の核反応が、〔入射エネルギー〕/〔入射原子核の質量数〕≦10MeVのエネルギー領域で考えられた。このような核反応で放出される、陽子、アルファ粒子、重陽子、及び三重水素原子核のエネルギー・スペクトルが計算された。この計算は、エキシトル模型を拡張することによって行われ、核融合反応を完成させるのに必要な時間が無視できる程短くはない、という事も考慮されている。一例として、N+Taの反応が入射エネルギー=115MeVの所で調べられ、実験の粒子放出スペクトルの形状がよく説明された。
佐藤 憲一*; 岩本 昭; 原田 吉之助
Physical Review C, 28(4), p.1527 - 1537, 1983/00
被引用回数:80 パーセンタイル:92.78(Physics, Nuclear)岩本-原田の論文で提唱され、(p,)反応に対して応用された複合軽粒子放出に対するエキシトン模型を、数十MeVの入射エネルギーでの(p,d)、(p,t)および(p,He)反応のエネルギースペクトルに対して計算して実験値と比較した。その結果、これらの反応の主たる断面積は平衝化の過程の途中で起るpick-up反応から生じていることが分り、かつ実験値を良く再現することが示された。特に(p,t)と(p,He)反応においては(p,)反応の場合と同程度の良い結果が得られ、それらの相対的な断面積の比も良く再現された。これらの結果より、我々の模型で仮定した単純な反応機構が、前平衝状態からの複合軽粒子の放出を記述するのに非常に有効であることが示された。
岩本 昭; 原田 吉之助
Physical Review C, 26(5), p.1821 - 1834, 1982/00
被引用回数:196 パーセンタイル:97.92(Physics, Nuclear)陽子又は中性子が入射して起る核反応のうちで、複合核反応と直接反応の中間的な反応があり、これを取扱う理論としてエキシトン模型がある。これに基く計算は(P,P')反応などでは成功したが、(P,)反応などのように複合粒子が放出される反応に対しては適切な定式化がされていなかった。我々はこの定式化を試み、特に放出複合粒子の内部状態を考慮するという点で従来の模型を拡張した。この定式化に基き(P,)反応に対する数値計算を行い、この結果従来の計算ではうまく出せなかった高エネルギーのアルファ粒子の断面積およびスペクトルの形の実験値を計算で再現できることを示した。
鈴木 渓
no journal, ,
通常の近藤効果は金属中に局在する不純物によって引き起こされ、系の電気的/熱的/輸送的性質に対して大きな影響を及ぼす。一方で、高密度のクォーク物質においては、比較的重い不純物クォークと軽いクォークとのカラー交換相互作用によって同様の効果が起こることが期待されている(QCD近藤効果)。この講演では、Refs.~[1,2]において予言された、ライトクォークとヘビークォークから成る凝縮によって特徴づけられる新しい相についてレビューを行う。特に、この相における励起状態として現れる様々なエキシトンモードについて議論を行う~[3]。これらのモードは高密度クォーク物質における輸送的性質に寄与することが期待される。[1] S. Yasui, K. Suzuki, and K. Itakura, Nucl. Phys. A983 (2019) 90. [2] S. Yasui, K. Suzuki, and K. Itakura, Phys. Rev. D96 (2017) 014016. [3] D. Suenaga, K. Suzuki, and S. Yasui, arXiv:1909.07573.